JIA三重の出前授業として、2017年から毎年、住宅課題や卒業設計の指導をしてきた卒業作品選です。

三重短期大学　生活科学科教授　木下誠一さんからのメッセージ

プロの建築家から直接指導を受けられるとあって、普段より学生のモチベーションも高く、意欲的に取り組む姿勢が見られます。講師の方々には、様々な観点から丁寧にご指導いただくことで、作品の質や多様性も高まってきていると感じています。
また、出題内容や指導方法などについても、改善に向けた示唆に富むご提案をいただいており、教育効果の向上につながっています。
学生にとって、建築家という存在は憧れの対象であって遠い存在であるともいえますので、この授業を通して建築家と接することが刺激となり、将来、講師の方々のような地域で活躍する建築家が育ってくれればと思っています。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

令和１年度

作品①　「自然と地域と学生をつなぐ」(大橋智美・平井千尋)

三重短大と三重大の中間にある河川合流点を望む敷地に、自然が感じられる広々としたオープンスペースを設け、その中心に学生や地域住民が交流できる複合施設を計画している。

円形の交流ホールを中心に、2棟の学生寮が挟む形で配置され、開放的な雁行形の学生寮

は、従来の画一的で閉鎖的なイメージを払拭している。

作品②　「VILLA　SAKATE～星と海を一望できる離島に泊まろう！！～」(町田絢実・若林桃香)

鳥羽沖に浮かぶ離島・坂手島への観光客誘致と地域活性化を目的に計画された宿泊施設である。施設は、自然景観への影響を少なくするため、戸建の棟を並べたヴィラタイプを採用している。これらは、山側と海側に配置され、山側は星空を意識して垂直に伸びた空間とし、海側は海への眺望を意識した開放的な空間として、異なる体験を得られるようにしている。

作品③　「海を見下ろす多機能水族館」(田邊愛)

志摩市賢島にある志摩マリンランド(水族館)の建て替え計画である。海や山などの自然環境を活かしつつ、展望台、結婚式、披露宴会場、美術展示、公園など、水族館以外の様々な機能を兼ね備えた施設として設計した。

外観は曲線を多用して周囲の自然に溶け込むようなデザインとし、内部は、回遊性をもたせ、入館者が思い思いのペースで観賞できるようにしている。

作品④　「根がつなぐ道～津観音を望む施設設計～」(田中遥香)

津市中心部に位置し、日本三大観音の一つに数えられる津観音に隣接する観音公園の再生計画である。様々な利用者が、毎日新たな発見ができ、個々に居場所を見いだせるよう、木の根をモチーフに複雑化させた歩道を設け、各所に、カフェ・図書館・和室・休憩所・事務所などを分散配置させている。ま、軸線を意識した津観音の空間とは、コントラストをなす空間となっている。

令和2年度

作品①　「反×重×合～相反するものを、重ねて、合わせる～」(畦地実乃璃)

地域のシンボルであった母校が、月日が経つにつれ、地域との関係性が希薄になり、災害時の避難場所にもかかわらず温かみが感じられない雰囲気の学校となってしまった。そこで、地域住民の日常生活の一部(自由な出入り,憩い,交流)として機能しつつ、非日常時には防災拠点として機能する計画とした。

また、異なる学年、学科、部活動を行う学生同士が、互いに触れ合い刺激を与えつつ、その存在を疎ましく思わないような魅力ある空間を提案した。

作品②　「地域の医療に寄り添った健康センター」(一色璃乃・杉本陽菜)

今日のコロナ禍の状況をふまえ、感染症対策を意識した医療施設の提案を行っている。施設は、一般診療と特別診療施設を完備した夜間休日診療棟、地域の人々がふれあい交流でき健康づくりをサポートする交流棟、健康相談や育児相談などに対応した相談室棟の３棟によって構成される。これらを広々とした敷地にゆったりと分散配置し、曲線状のボンエルフの通路でつなげ、丘広場等を設けることで、地域住民が気軽に立ち寄れる開放的な空間とした。

作品③　「住む龍神」山本麗未

和歌山県紀南の山奥にある美しい景観が魅力的な龍神エリアを対象に、「住む場所」としての価値を高める提案を行った。過疎化や空き家問題等を抱える当エリアへの移住を促進するためには、地域住民と移住者との関係性や移住に対するハードルの課題を解決する必要がある。そこで、住民が境遇に関係なく集まれる集会場、移住に興味がある人が短期滞在できるリノベーション住居(リモートワーク向けの住戸とアトリエ付きの住戸)、誰にでも龍神の魅力が伝わる観光交流施設を計画した。

番外編

一年生の住宅の課題作品です。